メルトフローレート(MFR・MVR)とは?
メルトフローレート(MFR・MVR)とは?
プラスチック材料の流動性の測定方法と求め方
熱可塑性樹脂は、安価に大量生産が可能なことから、家電製品や自動車部品、生活雑貨などのあらゆる製品に利用され、私たちの生活において欠かせないものとなっています。
熱可塑性樹脂の加工方法として、射出成形、押出成形、ブロー成形などの方法がありますが、いずれの成形方法においても、溶融状態の樹脂の流動性は重要な指標となります。
メルトフローレートは、溶融樹脂の流動性の指標として広く用いられているもので、ISO・JIS・ASTMでそれぞれ規格化されており、ISOとJISに対してASTMは用語や規定に若干異なる部分がありますが、測定原理は同一です。
一般的に、メルトフローレートが大きいほど流動性が良いと評価され、小さいほど流動性が悪いとされます。また、同じ種類の樹脂を測定した場合には、値が大きいほど低分子量、小さいほど高分子量と評価されます。
ただし、基本的にほぼ静的な状態での測定であるため、測定中の樹脂に生じるせん断速度は射出成形などにおける加工時のせん断速度に対して非常に小さく、実際の加工時の挙動とは相関性がない場合もあります。そのため、主に材料の品質管理において用いられています。
1.測定原理
シリンダに入れた樹脂を一定温度で加熱して上からピストンで荷重を与え、シリンダ底部に設けられたダイから押し出された樹脂量を測定します。
樹脂量の測り方により、A法とB法の2種類の測定方法があります。
また、結果の表し方として、MFR(メルトマスフローレート / Melt mass-flow rate)と、MVR(メルトボリュームレート / Melt volume-flow rate)の2種類があります。
A法測定
ダイから押し出された樹脂を一定時間で切り取って質量を測定し、次の式から10分当たりの質量[g/10min]を算出します。
- m:切り取った樹脂の重さ [g]
- t:樹脂の切り取り時間間隔 [s]
B法測定
一定時間にピストンが動いた距離を測定するか、一定距離をピストンが動くのに要した時間を測定し、次の式から10分当たりの体積[cm3/10min]を算出します。
- A:シリンダおよびピストンヘッドの公称平均断面積 [cm²]
- l:ピストンの移動距離 [cm]
- t:ピストンの移動時間 [s]
この10分当たりの体積 [cm³/10min]をMVRと呼びます。また、測定した樹脂の試験温度での溶融密度が既知の場合、次の式からMFRを算出することができます。
- ρ:測定樹脂の試験温度での溶融密度 [g/cm³]
B法測定では、試験機にピストンの移動距離を測定する装置と移動時間を測定するタイマーが設けられている必要があります。
2.測定手順
基本的な測定は次の手順で行われます。
①ピストンを空のシリンダに挿入し、試験温度で安定させる。
②測定する樹脂をシリンダに充填し、充填棒を用いて試料を上から圧縮し脱気する。(この工程は1分未満で行う)
③直ちにピストンをセットし、予熱を開始する。また、試験条件に応じてウエイトを負荷する。(樹脂の充填量と予熱中の負荷ウエイトによって予熱時間を調整する。低溶融粘度の樹脂においては、予熱中に樹脂が流れ切ってしまうことを防ぐため、流出防止機構が必要な場合もある)
④測定開始位置にピストンが降下したところで測定を開始する。
⑤A法測定の場合は樹脂をカットして回収し、B法測定の場合は試験機がピストンの移動量または移動時間を自動で測定する。(規格や規定によっては複数回測定し、平均値を算出する)
⑥測定終了位置にピストンが降下するまでに測定を完了する。
3.測定におけるばらつきの要因
メルトフローレート測定では、手順や測定方法に起因する測定誤差が生じやすいものです。
例えば充填時の脱気作業では、測定者によって脱気具合や充填時間に差が生じる場合があります。また、予熱時間は樹脂の充填量と予熱中の荷重の掛け方によって変わるため、熱履歴の影響を受けやすい樹脂や熱伝導率の低い樹脂の場合はその影響が大きくなります。
そのため安定した測定を行うためには、測定者によって測定作業を均一化し、適切な予熱時間を含め試験条件を一定にするか、もしくは測定時間を自動化する機能がついた試験機を使用することでデータのばらつきの要因を減らすことができます。
測定者によるばらつき要因 | 樹脂の脱気具合、充填時間、測定後の装置の清掃具合など |
測定条件によるばらつき要因 | 予熱時間(充填する樹脂の量、予熱中の荷重の掛け方) |
測定樹脂によるばらつき要因 | 吸湿性(樹脂によっては事前乾燥が必要)、フィラー(カーボンブラック、ガラス繊維など)、熱に対する特性(熱履歴による影響が大きい、低熱伝導率)など |
測定におけるばらつきの要因
4.測定装置
No.522 メルトインデックサ G-02
手動測定タイプのベーシックなモデルです。
- B法用フローレイト装置(ピストン移動距離測定用ロータリーエンコーダー)、おもり持上げ装置、自動カット装置等のオプションを自由に追加できます。
No.522 メルトインデックサ G-02・自動荷重切替(マルチウエイト)仕様
単一荷重による試験に加えて、1度の試験で複数の荷重を加えるマルチウエイト測定(ASTM D1238 D法)にも対応したモデルです。
- せん断速度を変えた複数の水準で測定することにより、「せん断速度 vs 溶融粘度」のデータを簡易的に得る事ができます。
- ウエイトは本体に内蔵され、自動的に切り替えられるため、測定作業の省力化・効率化・安全性向上に貢献します。
No.521 セミオートメルトインデックサ 4A
測定の一部を自動化したモデルです。
- ウエイトの負荷・予熱開始から測定終了後の残試料排出までと、シリンダの清掃(清掃で使用するガーゼは手動セット)を自動で行うことで、安全に安定した測定が可能となっています。
- 樹脂の充填とシリンダ清掃は測定者が確認しながら行うことで、全自動機では充填が難しい樹脂や、自動清掃ではガーゼの耐熱温度的に危険性のあるような高温(400℃まで)の測定に対応しています。
- PCソフトウェア(リアルタイムデータ出力対応)、試料自動カット装置、試料自動回収装置、流出防止装置(高流動性樹脂向け)、A法自動算出天びん(質量を試験機に送信しMFRを自動算出)などの多彩なオプションで測定やデータ管理の効率化に寄与します。
No.520 メルトフローレイタ D-M
試料投入⇒測定⇒清掃が完全自動化されたモデルです。
- 試料投入から清掃まで完全自動化。測定作業の省力化・効率化・再現性向上に貢献します。
- サンプルカップ10個(オプション40個)の連続試験が可能。
- コンパクト・省スペースなデスクトップモデル(※高さ1060mm)
- 豊富なオプションが選択可能(A法自動測定、電熱式乾燥装置、ドライ空気式乾燥ユニット、荷重変更機構など)
本文は、一般社団法人 日本試験機工業会発行の広報誌『TEST』Vol.63(2022年4月発行)にて発表した内容を追記・再構成したものです。
- 題目:「プラスチック材料の流動性の測定方法と求め方―メルトフローレート測定と試験装置について」
- 筆者:株式会社東洋精機製作所 道田亮平
- 書名:『TEST』Vol.63(一般社団法人 日本試験機工業会)
- 発行年月:2022年4月
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